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| 弓の先端部 | 白く見えるのがくさび |
ひとりごと2000.4号
はじめに言葉があった。音楽は言葉になった。音楽は対話である・・・。
ということで、ついにBCJに「対話曲」が登場しました。曲のほとんどがデュエットになっていて、そこに時々イエスとおぼしき「バス」が登場する。それでも最後は４声コラール。対話曲にも色々なパターンがあって、悩める魂にイエスが語りかけたり、アリアの上にコラールが乗っていたり、「対話曲」の分析だけでも論文が書けてしまいそうです。実は、ＡＨ、この「対話曲」が結構好きなんです。ところが、「対話曲」はプログラム編集者泣かせでもあります。歌詞対訳をつける時に、同時に全然違う歌詞を歌ってたりするものですから、どうやったら聴衆にわかりやすく表現できるか、工夫がいります。オペラシティには歌詞訳が表示できる電光装置も備えつけられていますが、これも対話曲では役に立ちません。聴いていて派手な合唱はないし、かなり「地味」なジャンルですが、それでも「言葉」がストレートに伝わってくるので、説得力はあります。これから続々と登場する「対話曲」に注目しましょう。
さて、最近仕事が忙しく、なかなか定期演奏会に定時に入れないＡＨですが、昨日はようやく初めて時間前につきました。そして、今年のシリーズからカンタータの前に今井奈緒子さんのオルガン独奏があります。これも初体験なのですが、なかなかどうして「場」にピッタリなのです。いまでもパイプオルガンをもつプロテスタント教会では、礼拝が始まる前にバッハやブクステフーデのオルガン曲が演奏されることがありますが（ＡＨが通っていた教会もそうでした）、それに共通するものを感じるのです。カンタータはもちろん、礼拝そのものですから、その前にオルガン独奏が入るというのは実にしっくりきます。来年以降も続けてほしいですね（そんなに曲があるかどうかはわかりませんが）。
それにしても、昨日のプログラムは超マイナーな曲ばかりでしたが、その多様性、前衛性には驚くばかりです。発見の連続でした。やはり、「カンタータを聴かずしてバッハを語れず」というのは、こういう曲を聴くとつくづくそう思います。「バロック音楽は心地よい」などというのがいかにウソかというのがよくわかります。
それと、４月のマタイ以来、ソリストに合唱を歌わせるスタイルを採用していますが、さすがに表現力が違いますね。各パートも３人ずつしかいませんが、声量も十分だし、説得力においては４人体制の時と何ら変わりません。まさに「音楽は言葉になった」です。特にアルトは波多野さん、ロビン、そして社長ですから、目立たない内声にもかかわらず存在感十分です。いつまでこのスタイルが続けられるのかはわかりませんが（ソリストの負担も重いし）、我々にとっては悪いことではなさそうです。期待しましょう。
（2000/09/24）
今日、家に帰ったら、ＢＣＪ事務局から２２日のコンサートのプログラム無料引換券が来ていました。これは賛助会員だけの特典で、つい最近から始まったものです。昔は、賛助会員だけでなく、すべての座席にあらかじめプログラムがおいてあって、座席までもが「いらっしゃいませ」と我々聴衆を迎えてくれるような感じがしたものです。とはいっても、これは定員６００人で３００人くらいしか聴衆がいなかったカザルス時代のごく初期の話。有料化した時には「どうして？」という声もありましたが、慣れてくれば５００円くらいはどうっていうことないです。開演前の時間がない時に並んでプログラムを買うのが面倒くさいという程度でしょうか。そして、そうなってしまうと逆に無料でいただけるといってもやはり買いたくなってしまう。ヘンなものです。買わないとありがたみがないといおうか、無料では申し訳ないといおうか・・・。全く勝手なものです。
そういえば、前回のコンサートは欠席してしまったので、プログラムをもっていません。事務局にはまだあるのでしょうか？せめてプログラムくらいは。
ということで、２２日は本当に久々の（ヨハネ以来）ＢＣＪのコンサート。最近、「私生活」という概念そのものが私の中で消滅しつつあるので、完全にそうなる前に何とか「復活」のきっかけを作りたいと思います。
（2000/09/21）
最近、とにかく忙しくて、なかなか更新ができません。そしてＣＤショップにもなかなかいけない。こうなると、WEB SITEでクレジットカードで買物したくなる。昼間は家にいないので「代引」はつかえない。セキュリティ技術を信じてクレジットカードを使う。幸い、タワーもＨＭＶもWEB上でＣＤを販売しているらしい。今度一度試しに使ってみようと思います。とはいえ、マニアックな「古楽ＣＤ」など扱ってくれるのでしょうか？
それはさておき、久々に渋谷ＨＭＶにいって久々に「うれしいＣＤ」２枚に出会いました。
１枚は、バッハの「リコーダーとヴァイオリン、通奏低音のソナタ集」。もう１枚はモーツァルト「フルートとハープの協奏曲」。まずは、バッハから。これはオルガンのためのトリオソナタをリコーダーとヴァイオリン用に編曲したもの。その他に無伴奏チェロ組曲をリコーダーで吹いたもの。この手のＣＤはその昔、クイケン兄弟が録音しており、また来日公演でもしばしば演奏されました。ＡＨ自身も何度か演奏したことがあります。無伴奏チェロ組曲のリコーダー版といえば、ブリュッヘンの「珍盤」が有名です。これだけならともかく、うれしいのは演奏者がフランソワ・フェルナンデスを含む「Le Concert Français」であること。こういうサウンド、演奏スタイルは、とても懐かしく、また、聞いていてホッとする。イタリア人に代表される過激な解釈もいいですが、つかれた心と体をリラックスさせるのにはこういうのが一番です。古くからの古楽ファンにはオススメですね。番号は「Astree E8676」です。
もう１枚は超メジャーなＣＤ。アーノンクール＆ＣＭＷにゲストがハープの吉野直子というもの。別に吉野直子とアーノンクールの共演がうれしいというのではなく、ＣＭＷのメンバーがうれしかったということです。吉野直子さんが出ているので当然のことながら日本盤も出ていますが、ＡＨは輸入盤を買いました。目的はただ１つ。ＣＭＷのメンバー表と使用楽器表がほしかったということです。でも、その甲斐あって、メンバー表には懐かしい名前が数多く載っていました。創立以来のメンバー（正確にはTeldec移籍以来）が４〜５人も残っていました。もう４０年近く経つわけで、その息の長さは驚くべきです。Walter Pfeiffer,Peter Schoberwalter,Eduard Hruzaなどは、古い古楽ファンには懐かしい名前です。テレマンの３本オーボエ、３本ヴァイオリンの協奏曲のＬＰなど、好きだった人も多かったのではないでしょうか。その他、Anita Mitter,Marie WolfとかLeopold Rudolf（昔はRudolf Leopoldだった）、Herwig Tachezi,そしてMilan Turkovicなどカンタータ大全集でおなじみの面々もいまだ現役。しかし、何といってもうれしかったのは「Alice Harnoncourt」という名を見たとき。まだ引退していなかったんだ！（録音時点） コンサートマスターこそ譲ったものの、「Jacobs Stainer,Absam1665」を携えてがんばっているようです。やはり、彼女とVioloneのEduard HruzaのサウンドがないとCMWらしくありません。吉野直子さんのハープが平均律でなかったのもうれしかったですが、あまりに月並みなので、これ以上言及しません。ただ、日本人でＣＭＷと共演した人でかつＣＤが残っている人って、大昔の佐藤豊彦さんとか飯山さん（ロ短調ミサ旧盤？）くらいしかいないし、しかもソリストだから、これは画期的かもしれない。
ということですが、演奏は、いかにもアーノンクールらしいですが、以前のモーツァルトに比べると随分おとなしくなった感じ。オーボエ協奏曲とクラリネット協奏曲は以前に録音していなかったかな？
それにしても、この歳でもう「昔を懐かしむ」ような聴き方って、いいのかなあ・・・・。
（2000/09/16）
第196のひとりごと・・・ブリュッヘンは「リコーダー奏者」？
ＡＨは仕事柄、多くのメールマガジンを購読している。その中に「インプレス」が発行する「Internet Watch」というメールマガジンがある。本日発行のものの中に「１８世紀オケ」を紹介したものがあった。「ウォッチャーが選ぶ今日のサイト」というコーナーで「taoga」というレポーターが紹介しているのだが、この人、きっと古い古楽ファンに違いない。
というのも、紹介文の中にこんな一節があるからだ。
> フランス・ブリュッヘンの名前はリコーダー名手として有名で、数多くの録音を耳
>にしたことのある人は多いと思います。それに比べると、彼の率いるバロックオーケ
ストラを知っている人は、まだ少ないかもしれません。
フランス・ブリュッヘンがリコーダー奏者だと知っている人は、せいぜい８０年代に古楽に接していた人くらいで、それ以降知った人は、もはやブリュッヘンは「指揮者」だと思っている人が多いのではないか。
私の知っている限り、弟子のアンサンブルへのゲスト出演ＣＤを除いては、８０年代前半にSEONから発売になった「VIVALDI リコーダー協奏曲集」を最後に、ブリュッヘンがリコーダー奏者、トラヴェルソ奏者としてＣＤ録音したものはない。すでに、８０年代はじめには事実上引退し、以降はひたすら１８世紀オケの指揮者として活躍することになる。
だから、９０年代にブリュッヘンを知った人間は、彼のリコーダー奏者としての輝かしい経歴より、指揮者としての印象が強いのではないか。ＡＨの印象は、もちろん、リコーダー奏者、トラヴェルソ奏者としてのイメージが圧倒的に強い。幸い、生演奏にも接することができたし。
とにかく、１８世紀オケのサイト、１回はのぞいてみたいものだ。２００２年には再来日の予定があるようだ。
・the Orchestra of the Eighteenth Century
http://www.orchestra18c.com/
（2000/09/06）
久々にＢＣＪ事務局からカンタータシリーズのＤＭがきました。それはいいのですが、その中に武田さんの記名入りメッセージが入っていました。どうも、最近、カンタータシリーズの注目度がイマイチなのを危惧している、というような内容でした。シリーズを続けようと思えば、いまの平均900人の聴衆を1200人にしなければならないようで、定期会員にドリンクサービスをつけたり、紹介割引をもうけたり、ということで、なんとか聴衆を増やしたいようです。
今年は2000年、バッハ没後250年で、バッハが最も注目されるべき年なのに、カンタータシリーズの注目度が下がる。私にいわせれば、これはある程度予想されたことです。だって、マタイ、ヨハネ、ロ短調ミサと、大作が多くの団体によって何度も演奏されるわけです。世間の目がそちらに行ってしまうのは無理もありません。それでも、ＢＣＪにとっては、サントリーホールで毎回2000人以上の聴衆を集め、ＢＣＪの魅力が広く知られるようになり、さらにそれを聞いた人の耳も肥える、ということを期待してあのような企画をぶち上げたわけで、もしそれが思惑通りになれば、いまは一時的に目立たなくても、必ずやカンタータの聴衆も増えるはずです。私は、「ブーム」の後の反動で客の入りが悪くなり、また、定期演奏会の雰囲気も変わってしまうのではないか、と危惧を表明していましたが、誰一人として私に同調するものはいませんでした。それどころか、「お前のような考え方では、聴衆は増えない」「ＢＣＪやバッハの音楽は広めなければならないのに、お前のような今の聴衆が満足できればそれでいいみたいな考えは間違っている」などと諸方面から随分言われました。それほど皆さん自信を持っているようです。
しかし、一般的にいえば、ブームの後の反動というのは必ずあります。今のインターネット関連銘柄の株価の悲惨さや世間の評判の悪さは、今年３月ごろのブームの最盛期とは全く異なっています。その反動を乗り越えて、「本物」だけが残る時、、「ブーム」が「当たり前」になり、安定した成果を得ることができるようになると思います。
いま、一時的にカンタータが注目されないのは仕方がありません。そういう環境を自ら作り出してしまったのですから。しかし、「ブーム」が去った来年以降に備えて、何をなすべきかを今から考えて、実行に移さなければなりません。ドリンクサービスもいいですが、いまこそ、カンタータを多くの人に知ってもらうチャンスです。例えば、ロ短調ミサと関係するカンタータを徹底的に紹介するとか、場合によってはプレレクチャーで話してもいいでしょう。邪道かもしれませんが、有名曲との関係でカンタータを紹介するのは決して無駄ではないと思います。つまり、バッハの「パロディ研究」というやつです。受難曲やミサ曲、さらにオルガン曲を聴きに来た人に、それに関連するカンタータが聴きたいという気を起こさせる。そして、とにかく定期演奏会に足を運んでもらう。そこで、カンタータの虜にしてしまう。そういうストーリーです。
カンタータに関するレクチャーを、近江楽堂でやるというのもいいと思います。いままで、受難曲のレクチャーは数多く行われてきましたが、カンタータに関するものは、一部を除きほとんどありません。べつに、演奏会で取り上げる曲と直接の関係がなくてもいいです。なにか、連続ものでレクチャーをやるというのも無駄ではないと思います。
私は、個人的には、東京の聴衆を３００人増やすより、神戸の聴衆を３０人増やすにはどうしたらいいかのほうが気になります。どうして、あんなに環境のいい会場でやって、しかも、収容人員が２００人程度だというのに、空席が毎回３０近くもあるのか、東京のファンから見れば、「どうして？」という感じです。定期会員席こそ常に満席ですが、一般席は半分以上が空席です。最近では東京から何人か押しかけるので、若干状況は改善されましたが、それでもまだまだ空席があります。
当日券でも十分はいれます。ぜひ、神戸公演に定期会員以外の方にも行っていただきたいと思います。
（2000/08/20）
1985年8月13日。その日の朝刊は前日の御巣鷹山の大惨事でうめつくされていた。1面も、社会面も。その惨状はいまでも多くの人の目に焼き付いていることだろう。しかし、その記事でうめつくされた一角に、もう一つ忘れてはならない記事がひっそりと目立たぬようにのっていた。新進気鋭の若手ヴァイオリニスト 高田あずみ ジュネーブ国際音楽コンクールヴァイオリン部門最高位（１位なしの２位）。
あれからはや１５年。今年もテレビは御巣鷹山の惨劇を回想する。そして、ＡＨはその陰でひっそりと成し遂げられた一大偉業に思いを馳せるのだ。
（2000/08/13）
ＡＨがついにラジオのトーク番組に出演することになりました。ＫＢＳ京都ラジオの「e-biz」という番組。インターネットビジネスを目指す若者向けの番組です。そこに10分程度出演し、ＡＨが若者に語りかけます。
先日、東京築地のスタジオで収録をすませてきました。こういうことははじめてなので、勝手もわからず、「どんな声色で話したらいいか」とか、「渋くて真面目な方がいいか、若者向けに軽いノリの方がいいか」なんて悩むばかり。トーク番組といえば、正月男鈴木雅明さんのようなあういうノリもいいかななんていう風にも考えてしまったのですが、中身の格調高さが違いますから・・・。
いざ、スタジオに入ると、いつもテレビで見ているお姉さんがいて、それだけでも緊張します。やっぱり、本物の方が断然きれいです。そんな人とトークするわけですから、テンションはあがってしまいますね。
そして収録開始。一応台本はあるのですが、結構アドリブも出来て、逆にそれが原因で話が長くなりすぎて、タイムオーバー。あとで編集するとはいえ、やっぱり時間のことは考えて話さないとな、と反省しきり・・・。とはいっても仕方がないので、放送できなかった部分は番組のWEB SITEに収録することになりました。
一番緊張して、かつうまくいかなかったのが、私の勤務先のWEBSITEのURLの紹介。「ひとりごと」みたいなヘンなSITEをネットベンチャーに知られたら一大事なので、勤務先の紹介になったのです。一応、台本にはカタカナがふってあったので、それを見ながら読んだのですが、アルファベットをカタカナ読みするというのは結構難しくて、なんだか異様にぎこちなくなってしまいました。ここだけは再収録。でもぜんぜんだめ。やっぱり、アルファベットを見てそのまま素直に読んだ方がよかったかな、などと今になって後悔しています。
今回は最初だったので、全然ダメでしたが、慣れて来ればなんとかなるかなという気もします。
将来の夢は、トーク番組でインタビューされて、趣味など聞かれて「ＢＣＪが演奏するバッハが好きです」などとカッコよく答えてみたい。そしてそれを聞いた人がＣＤショップへ走る・・・。まだまだ道のりは遠いですが。
さて、放送日ですが、地方によって異なります。
| 「ｅ−ｂｉｚ」＃２１ 放送日 北海道放送 土 ２５：３０〜２６：００ 8月26日 東北放送 木 ２４：３０〜２5：００ 8月24日 ラジオ日本 火 ２４：３０〜２５：００ 8月22日 東海ラジオ 金 ２４：３０〜２５：００ 8月25日 ＫＢＳ京都 金 ２４：３０〜２５：００ 8月18日 ラジオ関西 土 ２２：３０〜２３：００ 8月26日 中国放送 土 ２４：３０〜２５：００ 8月26日 九州朝日放送 土 ２４：３０〜２５：００ 8月26日 南日本放送 水 ２３：３０〜２４：００ 8月23日 |
もしよろしければどうぞ。
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ネットベンチャーの熱い鼓動を伝える
ラジオ・ｗｅｂ連動番組 「ｅ−ｂｉｚ」
全国９局ネットで絶賛放送中！！
http://www.ebiz-web.net
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（2000/08/13）
第192のひとりごと・・・鈴木秀美に何が起こった？その後・・・
「第190ひとりごと」でサントリー「ヨハネ」の際に起こった鈴木秀美さんの弓の事故についてお伝えしましたが、その後、とある筋からの情報で、私の推測が間違っているようだということが判明しましたので、お伝えしておきます。
そもそも、私の場合でもそうですが、多くの弓（モダンも含めて）で使われているあの写真のような構造では、毛が外れるという事故が起きる確率が高いということから、秀美さんの弓の場合には、全く独自の毛留めの方法を採用しているということらしいのです。詳しいことは現物を見たわけではないのでわかりませんが、くさびを使わないようです。ですから、私の推測のような原因で毛が外れるということはありえないということのようです。
古楽器に親しんでいる人なら常識ですが、実は、当時のオリジナルの楽器の正確なレプリカというのはほとんど存在しません。チェンバロならルッカース、ヴァイオリンならアマティとかシュタイナー、管楽器ならステインズビーとかデナー等の当時の楽器をコピーして、基本的にはその「スタイル」のモデルであることは間違いないのですが、細かいところ、そして音色作りのところで現代の作者の創意工夫、個性を見ることができます。例えば、鈴木雅明さんのルッカース（あのしなった楽器）は、他の現代の作者が作った同じルッカースタイプの楽器とは随分音色が違います。まさに、作者のクロスベルヘンの個性が前面に出ています。オルガンでも、作者によって、さらに1台1台全く個性も構造も違うようです。
弦楽器の弓は、非常に目立たず、しかも、モダンの弓はスタイルもほぼ一様なので余り意識されませんが、これも事情は同じです。そしてメカニカルなところで意外と創意工夫がなされているようです。バロック時代、弓のかたち、長さが地域、作者などによって実に様々であったことはよく知られていますが、それだけでなく、メカニカルな面でも発展途上のこの時期らしく、様々な工夫がなされていたようです。たとえば、弓の毛の張りを調整するためのスクリュー、これはいまでは当たり前ですし、いわゆるバロック時代のコピー弓でも必ずついています。ところが、当時はこのスクリューがない弓も存在していたらしい。もちろん、当時の絵画を見ても、スクリューがすでについているものも17世紀には存在する。もし、スクリューがない弓のコピーを現代使うとしたらどうするか、そのままスクリューをつけないか、それともスクリューをつけるか、作者によって考え方は異なると思います。その他にも、もとの弓のよさを活かしながら技術的な工夫をしているようです。極端な話、同じ作者でも1本1本全部違うということもありえます。それと、材質の制限の問題もあります。特に、当時よく使われた象牙は現在では使うことができません。代替材料で例えば私の弓のように「マンモス」の牙を使うこともあります。また、木になってしまうことも少なくないです。そうなると重量やバランスがオリジナルとは違ってきてしまいます。となれば何らかの工夫をしなければならない。
と、こういうのが実態です。
さて、作者はそれなりに工夫を凝らしているのですが、それでも事故は起こります。そうめったにあることではありませんが、何らかの事故が起きるというケースはあります。チェンバロはデリケートな楽器なので、ちょっとした温度や湿度の変化でも響板に影響が出ることがあります。弦楽器の場合には、弦が切れるということ以外はさほどありませんが、それでも時々事故はあります。例え万全を期していてもです。だからこそ、大事なまた長丁場の演奏会では、予備の弓を持ってステージに上がるということなのだと思います。
秀美さんのようなタイプの弓は、実は個人的にはとても興味があって、前からほしいと密かに思っているものです。なんだか、懐が深そうで、中ぶくらみもしやすそうで、奥の深い表現ができそうな気がします。バランスを取るのがシロウトでは難しい、つまり、一流プロ向けという話しもありますが、是非一度は使ってみたいものです。実は、以前、秀美さんに聞いてみたことがあるのですが、英語で問い合わせなければならないということで断念したことがあります（情けないですが）。ＡＨごときびボーイングが超下手が例え手に入れても、「宝の持ち腐れ」になってしまい、使いこなせない可能性もなきにしもあらずですが・・・。
まぁ、事故の真相は明らかではありませんが、ヨハネが無事終わってヨカッタヨカッタということで・・・
それにしても、古楽器の世界は奥が深い。まだまだ知らないことがたくさんあるんだなぁ、と反省しきりのＡＨでした。
（2000/08/12）
炎天下で超激辛カレーを食べる。体が熱くなる。顔が真っ赤になる。汗が噴き出す。心臓の鼓動が高まる。血圧が上がる。ああ、とても危険。そんなコンサートが、近江楽堂で行われた。アントネッロの「チャーコーナ祭り」。次から次へと同じリズムが、低音が。おまけにカンツォン、フォリアまで。ああもうだめ・・・。
と思ったところへ、ハープの物静かな響き。キタローネも。ここでクールダウンして乱れた呼吸を整える。しかしそれもつかの間。再び激しい動悸に襲われる。
冷房をがんがんかけているはずなのに、気温はどんどん上がる。弦はどんどん伸びて、音はどんどん下がる。
セルマなんか大嫌い！ モンテヴェルディなんか大嫌い！ イタチェンなんか大嫌い！ リコーダー２本も大嫌い！
なんて無理に思ってもダメ。
セルマのガンバの曲は最高だ！ イタチェンがなきゃ祭りじゃない！ リコーダーは羊飼い？ これじゃ、羊が踊っちゃう。
コルネットの音とソプラノの声は、区別がつかない。「人間の声に最も近い音の楽器王」は、コルネットに決定！ ２位はオーボエ・ファゴットの「２枚舌」属、３位はヴァイオリン・ガンバ。似ていないのは・・・。
キタローネの棹は長い。何度も踏みつけられそうになる。気になって仕方がない。
それにしても、オルガンは品がよくて格調高い。
こんな曲、１７世紀イタリアではどんなシチュエーションで演奏されたのか・・・
やっぱり炎天下か、それとも、宮廷か、さもなくば教会か、一般家庭かもしれない。
そういえば、楽譜が売っていた。アントネッロ特製だそうだ。
しかし、楽譜を見ながら演奏を聴いて、同じ曲だとわかる人がどれだけいるでしょうか。
楽譜通りに演奏している人がどれだけいるのでしょうか。
さて、よい子の皆さんにお願い。
コンサートが始まる前や休憩時間中にチェンバロやリュート、ギター、ハープが調律しているときにはおしゃべりをやめて静かにしましょう。おしゃべりしたい人はロビーへ出ましょう。あんなにうるさきゃ、まりえちゃんが気の毒。レオンハルトは、調律が終わるまで聴衆を全員ロビーへ出させています。近江楽堂は、おしゃべりがよく響くので、大変なんです。
それより、「世紀の名盤」になるはずのフレスコバルディはどうなってしまったのでしょうか？
さて、「激辛度」を確かめるために、帰りに新宿駅で普通のビーフカレーを食べてみた。全然辛くなかった。やっぱりあれは「超激辛」だったんだ。
（2000/08/04）
この日の鈴木秀美さんは、なぜかとなりにいる山廣美芽さんと違うことを弾いていた。そして、レチタティーヴォでは、常に雅明さんのチェンバロに重ねていた訳ではなかった。通奏低音がチェンバロだけになることが結構あった。美芽さんと別のパートを弾いているというのは、たぶん、合唱のバスを補強していたのでしょう。合唱のバスと通奏低音パートというのは、重なる場面も少なからずありますが、結構違う場面も多いです。これはＡＨの想像ですが、合唱と通奏低音パートを除く弦楽器が完全にユニゾンになっている合唱でのみ、秀美さんが合唱のバスを補強していた様な気がします。ヴァイオリンがソプラノやアルトと別の動きをしているときには、バスの補強をしません。秀美さんが抜けても、通奏低音パートにはチェンバロ、オルガン、チェロ、コントラバス、ファゴット、コントラファゴットと、これだけいるのですから、特に支障はないということなのでしょうか。
さて、その秀美さんに異変が生じたことを、お気づきになられた方も多いかと思います。
遠くの方には何が起きたのかよくわからなかったかもしれませんが、実は弓が壊れたのです。具体的に言えば、毛が外れてしまったのです。下の写真をご覧ください。おそらく、この弓の先端部から毛が外れてしまったのではないかと思われます。
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| 弓の先端部 | 白く見えるのがくさび |
弓の毛は、簡単なくさびで留めているだけです。これが外れてしまうと、毛も外れてしまいます。使い込んでいると、弓の毛は切れたり抜けたりして本数が減って行きます（毛が薄くなる）。そうなると、くさびが緩んで、外れてしまう訳です。その他に、毛替えの際にくさびの留め方が甘いような場合にも起こります。あと、秀美さんの弓は、その形状からして、結構強い圧力が毛にかかるような気もするので、そのせいかもしれません。気合いはいっていましたし。
実は、ＡＨも本番直前にこれと同じことをやらかしてしまったことがあります。とてもショックでした。幸い別の弓を使い、本番には支障がありませんでしたが。
弓が壊れた瞬間、「ああ、やってしまった」と思いましたが、驚いたのは弓が壊れたことより、さっとチェンバロの下から別の弓を取り出して、何ごともなかったように弾き始めたこと。何と準備がいいのでしょうか！それとも何となく予感がしていたのでしょうか。普通は、予備の弓なんか持っていきません。少なくともヴァイオリンはそうです。なんというプロ根性でしょう。
さて、耳がいい皆様方なら、最初の弓と替えた弓とでは随分音色が違うことに気がつかれたと思います。弦楽器奏者にとっては常識ですが、弓による音色の違いというのは、意外と大きいです。全く同じ作者の全く同じモデルの全く同じ種類の材料を使っていても、音色は全然違います。それほど弓は重要なのです。「弘法筆を選ばず」というわけにはいかないのです。
ちなみに、これがもしヴァイオリニストだったらどうするか。
コンサートマスターならとなりの人から楽器を取り上げます。となりの人は機会を見つけて退場するか、または後ろの人から楽器を取り上げます。それ以外の人なら黙って退場でしょうか。チェロは2人しかいませんし、パートが違ったりしますからそういうわけにも行きませんね。
まあ、ともかくおわってよかった。これで秀美さんの通奏低音なしで曲が続いたらと思うとぞっとします。
（2000/07/31）
どうもＡＨが行くときに限って、サントリーホールでは「事件」がおきる。
数年前のピノックのコンサートでは、聴衆同士が演奏会中に大声で喧嘩。当然のことながら雰囲気は台無し。
それ以来、どうもサントリーでの古楽はＡＨにとって「鬼門」。
そして今回のヨハネでも・・・。
演奏中に２回も携帯電話の呼び出し音が鳴り響く。しかも２回目はロビンの「成し遂げられた」の最中。どうにかなんないのか？ もちろん、開演前には「マナーモードに切り替えてから電源をお切りください」のアナウンスがあったのだが。ここでのポイントは「マナーモードに切り替えてから」ということ。たとえ電源を切っていても、バッテリー切れが近づくと警告音が鳴ってしまう。それを防ぐためにはマナーモードにしておくことが必要。もしこれを読んでいたら注意していただきたい。それと、オペラシティの様に、ホール内に電波が届かない様にはできないのか。あとは、クロークで携帯電話の一時預りをしてはどうか・・・。
しかし、２人というのは何とも情けない。むろんＢＣＪでははじめて。
さて、それもそうなのだが、この日はそれでは終わらなかった。
Gertの「祈り」がまだ続いているのに、ＡＨの前の客が、いきなりテレビカメラの撮影者と口論をはじめた。さすがに演奏家がステージにいた間は控えめであったが、演奏家が去ると同時に激しく口論。何があったかわからないが、個人的にはとても水をさされた感じ。彼らには、Gertの「祈り」もＢＣＪのメッセージも、そして神の福音も届かなかったのであろうか？
とにかく、どちらが正しいとかそういうことではなくて、こういうことがあったことそのものがとても残念。
こうやってみると、「やはりサントリーだなー」と思わずにはいられない。
とにかく、放送局と聴衆がトラブルを起こしたわけだから、主催者であるサントリーホールとしては、事実関係を確かめた上で、もし、放送局側に落ち度があったなら、再発を防止すべく、何らかの改善策を講じてもらいたい。
年末の「ロ短調ミサ」では、このようなことが繰り返さない様に！
（2000/07/29）
Ach,Herr,laß dein'lieb'Engelein．．．．
彼は歌い、そして祈っていた。彼の目には光るものが・・・・
鈴木雅明の両腕がおりた。深々と頭を下げた。そして振り向いた。
割れんばかりの拍手が起こった。
しかし彼はまだ祈っていた。
ようやく彼の視線が、客席を向いた。
彼の名は、"Evangelist"。
彼の名は、”Gert Türk”。
私もいつのまにか彼と共に祈っていた。
そして彼と共に・・・。
（2000/07/28）
７／９はＢＣＪの１０周年記念コンサート＋記念パーティーでしたが、香港に行っていて欠席。その罪の意識にさいなまれて、この１週間はついに古楽を聴くことなく過ごしてしまった・・・。
とはいっても、もちろんほうぼうでＢＧＭとして流れているものは自然と耳に入ってきてしまうのですが。
罪滅ぼしではありませんが、香港でＨＭＶに行ってきました。もちろん古楽ＣＤを漁るためです。しかし、成果はなし。というのも、在庫の中味が日本と全く同じだったからです。日本語の帯がついた日本盤も結構あって、たまに中国語のものがあることを除けば、全く新鮮味がありませんでした。ただ１つの成果は、TELDECのカンタータ大全集の初回プレス盤があったこと。日本では今や中古ＣＤショップでしか手に入らない代物です。ＢＣＪのカンタータ全集はもちろんありました。
ついでに香港の音楽ホールも見てきましたが、もちろん古楽のコンサートはなし。「シギスヴァルト・クイケン」など、漢字で書いたらどうなるのだろう？ などと期待していましたが、残念ながらそういうのはなし。バッハ没後２５０年も全く話題にならず。古楽ファンにとっては、香港は全く魅力のない街です。
どうやら気分的には７／２８のヨハネまで古楽を聴かずに過ごしそうです。
（2000/07/15）
演奏会に行かないとネタがない。行くと更新する時間がなくなる・・・。という状況ですが、この１週間に行ったものを簡単にご紹介しようと思います。
６／２８ はサントリーホールで雅明さんのオルガンによるバッハ「１８のコラール」。非常に穏やかに時が過ぎ去っていったような感じ。いつも雅明さんの演奏は刺激が強くてそれが快感なのですが、今回は極めて落ちついた感じ。オルガンの音色の変化も「驚き」を感じさせるような場面は余りありませんでした。それと、全体的に見て半音階がにスムーズに流れてしまって、緊張感があまり感じられなかった。普段、ミーントーンなどの不均等律に慣れすぎているせいでしょうか。結局、なんだかいつもの雅明さんの演奏とはかなり違った趣の演奏になっていた様な気がします。これも、サントリーホールの大オルガンの性格が影響しているのでしょうか。それとも、解説に雅明さんご自身が書かれていた「プリンチパル」を使えないせいでしょうか。ただ、最後のコラールについては、静かに消え入るような演出がとても新鮮でした。拍手もじっくり余韻を楽しんでから、静かに始まり、雰囲気がよかったです。最近、バッハ没後２５０年のせいか、宗教曲が終わったあとにもわれんばかりのブラヴォーが当たり前になってきている様ですが、この日のような終り方もなかなかいいです。そういえば、最近行った演奏会で、アンコールなしが続いています。この日もなし。まぁ、プログラム本編で完結しているわけだから、アンコールをやっても蛇足になるだけ。いいんじゃないでしょうか。
７／１ は、同じく雅明さんによるサントリー小ホールでのレクチャー「ヨハネ受難曲」。なんと、曲より長い２時間４５分の超長丁場のレクチャーになりました。とにかく内容がマニアックでおもしろかった。版による歌詞の違いの重要性、ヨハネ福音書の本質論などはとても説得力がありました。ＢＣＪの録音でおなじみの第４版の歌詞が極めてルター派的だというのには、思わす納得してしまいました。第１９、２０曲の歌詞を見ると、あまりに普段カンタータで出てくる言い回しと似ているんです。「私のイエスよ」などという呼びかけもそうです。それと比べると第３稿以前の歌詞は、いつもとちょっと趣が違います。それと、興味深かったのは、演奏の時に使ったスコア（新バッハ全集）の一部を見られたこと。書きこみがありましたが、正直いって、意外と少ないなという感じがしました。あれほど緻密に音楽を作るのだから、さぞかし細かい書きこみがびっしりなのかと思いきや、書きこみの量だけ見れば、アマチュアの楽譜とたいして変わらない。それとも、研究用、練習用のスコアというのは別にあるのでしょうか？ さすがに３時間近いレクチャーで疲れましたが、充実感はありました。それにしても、満員にはならないまでもあんなに多くの人があんなマニアックなレクチャーを聞きに来るのですから、何とも不思議です。
不思議といえばもっと不思議だったのが、７／２の「ガットカフェ」第２回。今回はフランスバロック音楽です。ボアモルティエ位は誰でも知っているでしょうけど、あとの作曲家は古楽ファンの間でも極めて無名。よほどマニアックなチェリストしか知らないだろうという代物ばかり。まぁ、バロック時代のチェロのレパートリーが少ないということもあります。ましてフランスはガンバ中心の国。チェロの曲など極めて少ない。そんなマニアックな企画にもかかわらず、なんと６０人近い受講者、聴講者を集めたのだから・・・。一体どんな人々なのでしょうか？ アマチュアチェリストやプロの卵はだいたい顔を知っているのですが、知らない顔も多かった。内容的には、フランスバロックを普段からやりなれている人にとっては特に目新しいことはありませんでしたが、チェリストというのは、オケでリュリやラモー、ムファットの作品でも演奏しない限り、めったにフランスバロック（古典音楽）に接することがありません。何もかもが目新しいという感じの人もいました。特に、イネガル奏法とか装飾音がなかなかうまくできない。
さて、恒例のコンサートですが、これまたマニアックな曲ばかり。秀美さんは、通奏低音パートのチェロがなくてもさほど影響のない曲（多分対位法的な曲やデュエット的な曲をさけたのでしょう）を選んだとのことですが、それにしても「お相手」の小島芳子さんのチェンバロでの通奏低音には「さすが」と思わせる部分が随所にありました。本番前のレッスンでアマチュアに合わせていましたが、これって意外と大変だと思います。あわせるのも難しいんじゃないでしょうか。これは私の経験からいえることです。お疲れ様でした。小島さんと秀美さんの通奏低音に乗せてソロを弾く。これだけでもものすごく勉強になります。なんだか自分が急にうまくなったような錯覚を覚えます。最初は錯覚だったのが、だんだん実際にうまくなります。いい通奏低音奏者は、ソリストから様々なものを引き出してくれます。「ガットカフェ」のいいところは、秀美さんの話ももちろんいいのですが、彼らの通奏低音にあわせて弾けること、そして彼らの通奏低音を命一杯楽しめること。それを痛いほどわかっているものだから、聴いていて、うらやましいです。
以上、ＡＨの１週間でした。
（2000/07/02）
ＢＣＪのバッハ ヴァイオリン協奏曲集のＣＤがようやく発売になりました。「協奏曲集１」となっていますから、協奏曲全集になるのでしょう。ブランデンブルク協奏曲が第２巻（ここまでは録音済）、第３巻はチェンバロ協奏曲全集になるのではと期待していますが・・・。
この演奏、寺神戸さんがラ・プティット・バンドのような真面目で端正な演奏を聴かせるかと思いきや、かなり大胆な解釈をしているので、正直驚きました。特に「らしくない」と思ったのは、第１番の第１楽章６３小節目。
こういうところをレガート気味に弾いているのですね。Ｄ（８分音符）からＡ（４分音符）に行くところです。こういう弾き方を同じようなところで繰り返ししています。シギスだったら絶対にこういう弾き方はしない。アリス･アーノンクールがよくやる手です（彼女の演奏はここではこうしていませんが）。
日本ではクイケン門下生が多いので、今までなかなかこのような解釈が聴けなかったのですが、かなり独自のもの、そして自由な解釈が生まれてくるようになったこと、心からうれしく思います。
しかし、このような解釈は、実はすでに１５年前のバッハ生誕３００年の年に日本に存在していました。当時すでにあずみ師匠についていたこともあり、あまり大きな声ではいえませんがＡＨの解釈です。この曲そのものではありませんが、これをチェンバロ用に編曲したチェンバロ協奏曲ト短調BWV1058を演奏したときに、このような解釈をしました。その時には、このＣＤにも登場するコントラバスの櫻井茂さんも出演なさっていました。つまり、ＡＨと櫻井さんの初共演というわけです。むろん、演奏レベルはＢＣＪとは比べ物になるはずもないですが・・・。
この他にも、ドッペル協奏曲BWV1043もかなり大胆ですね。
ところで、この協奏曲集、本番ではカンタータの合間に演奏され、しかも東京と神戸で曲目が違うという、まこともってファンにとっては不本意なままになっています。なんとか、ここで演奏されている協奏曲の全曲コンサートを開いてもらえないでしょうか。
最後に、まことに勝手ながら、このＣＤを故佐々木節夫さんに捧げたいと思います。日本盤の解説には、佐々木さんがこの生演奏を聞いて感激した時の逸話が紹介されるのでしょうか？ 涙なくして語れません。
（2000/06/25）
米良ファン及び熱心なＢＣＪファンにはあまりにも古いネタで恐縮ですが、米良ちんのベストアルバム「Mera sings Bach」（バロックアリア集２）が出ました。「またどうせＢＣＪカンタータなどからの抜粋ものに違いない」などと勝手に思って目もくれなかったのですが、日本語盤が出てその帯を見てビックリ。「未発表テイク収録！」とあるではありませんか。「そんなのあるはずない」とは思いましたが、トラック６、７の曲名と、そばにあったカンタータ全集を見比べてみると、やはり見当らない。これは確かに「未発表テイク」に違いない。そう確信した途端、すでにレジに向かっていました。カンタータ第７２番第２曲です。録音は、１９９６年８月。９月初めには、アーレの録音のためにオランダに出かけたのですが、その直前の録音ということになります。練習のついでだったのでしょうか？
カンタータ第７２番は、１９９６年３月の定期演奏会で取り上げられていますが、初期カンタータシリーズの中での突然のライプツィッヒカンタータシリーズということからか、録音はお蔵入りしたか、録音そのものをしなかったか、ということで、カンタータシリーズ開始後の定期演奏会でありながらＣＤは発売されていません。なお、この演奏会は、神戸では行われていません。大震災の被害から立ち直っていなかったということでしょうか。
さて、収録曲はＶＮ２本のオブリガート付なのですが、残念ながら、誰が弾いているのか、日本盤ではわかりません。その音色、歌いまわし、３月のコンサートのメンバー、アーレのレコーディングメンバー等からすると、寺神戸さん＆あずみ師匠ということなのではないかと思われますが・・・。
しかし、改めて聴いてみると、やっぱり米良ちんはいいねぇ〜。最近はどんな感じなのか全くわからないけど、もし、古いものを歌ってくれるなら、もう一度生で聴いてみたい様な気がする。
これは言ってはいけないのかなぁ・・・。
（2000/06/18）
第183のひとりごと・・・HERREWEGHEのロ短調ミサ新録音？
HERREWEGHE率いるCOLLEGIUM VOCALEの衝撃的な日本公演が終わってはや10日。その興奮さめやまぬうちにロ短調ミサの新録音が出た・・・という訳ではないのですが、それに似たようなＣＤが出ました。ロ短調ミサといえば、クリスマスオラトリオと並んでそのほとんどの楽章が他曲からのパロディだと言われています。今回出たＣＤもそうしたパロディの原曲のうちのいくつかが収録されているものです。とはいえ、演奏メンバーは今回の来日とほとんど同じ。ソロはヨーク、ダンツ、パドモア、コーイ。合唱団メンバーもほとんど同じ。録音は昨年。ということで、日本公演を思い出すには絶好の1枚となっています。
収録されているのは、カンタータ120、119、29番の3曲。120番の第2曲はロ短調ミサの「ニケア信条」の最後の合唱「そして待ち望みます」に、29番の第2曲はミサの第7曲と第27曲、つまりミサの締めくくりの曲に転用されています。ちなみに、29番の第1曲シンフォニアは、無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番の第1曲からオルガン協奏曲風に編曲されたものです。この他に、ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番の第2版に使われた曲の原曲が、ヴァイオリンオブリガートつきソプラノアリアとして119番に収録されています。
ＢＣＪのカンタータ全集にもロ短調ミサの原曲となるカンタータの録音がありますが（第11巻）、これを聴いて年末のロ短調の演奏を予想するというのもおもしろいかもしれません。往々にしてそういう予想というのは見事に裏切られることが多いのですが・・・。
（2000/06/10）
第182のひとりごと・・・世界・さいたま・島田の近所初演パーティー
昨日は、地元出身の島田俊雄さんが故郷に錦を飾りました。島田式謎の楽器を片手で持っての演奏。唇だけでブランデンブルク協奏曲第2番を演奏。さいたま芸術劇場への登場は２回目ですが、前回はクリオラの録音だけで本番はありませんでしたから、実質的には初登場ということになります。一族郎党から近所の方まで、たくさんの方が聞きにいらっしゃっていました。終わった後は、地元与野駅東口駅前の「庄や」で「近所初演パーティー」。都心から遠いので、演奏家は余り残らないかと思いきや、そこはお酒が大好きな方々。当然の様に大盛況でした。ご一族、ご近所、ご後輩の方々とも語らい、実に楽しいひとときでした。
実は、ＡＨにとってもここは地元。与野駅前は私の出身小学校、中学校の学区内。島田さんの出身校の隣になります。よって、地元民同士の語らいの場にもなりました。そこで判明したのは、島田さんのお父様は、私の高校の大先輩だということ。他にも同じ高校の鹿も同じ吹奏楽部の後輩にも出会いました。
そんなこんなで、あっという間に１０：３０。なのに、まだまだ大勢の音楽家たちが残っている。「帰れなくなっても知らないぞ」というＡＨの心配をよそに、いつまでたっても飲みつづける。仕方がないので、先に帰って来てしまいました。これが終われば、次はオペラシティまでないからいいといえばその通りなのですが・・・。
そういえば、ＡＨの前には、この日一番の「お疲れ」の菅きよみさんが。この日は管弦楽組曲第２番とブランデンブルク協奏曲第５番と、フルートの大曲を２曲とも演奏。ほとんど主役でした。管弦楽組曲第２番、超有名な曲なので誰もこんなこと考えないでしょうけど、珍曲中の珍曲でもあるのです。管弦楽組曲といえばフランスではオーボエ、ファゴットに弦楽器、通奏低音というパターンが多く、ドイツでもそうです。同じような編成といえば、テレマンにあるかないかというくらいです。ということで、本家フランスでは全く珍しい編成です。昨日は、ロッテンブルクのコピー（Ａ＝３９２）を使っていたようです。普通、我々はこのピッチだとフランスオットテールモデルを思い浮かべるのですが、ロッテンブルクの低いピッチというのは独特の響きがあります。オペラシティに聴きにいかれる方は、フルートの音色にも注目してみてください。なお、バッハ自身がどのようなピッチでどのような楽器でこの曲を演奏したのかはわかりません。
次の「彩の国大バッハシリーズ」は２００１．１．７「音楽の捧げもの」です。
（2000/06/05）
今日は、さいたま芸術劇場でのブランデンブルクシリーズ初日。そして、ガルニエ作ポジティフオルガンお披露目コンサートでもある。しかし、客の入りはよくて２／３程度か。後ろの方はほとんど空席だった。どうしてこんなに有名な演奏家、有名な曲で、こんなにも客が入らないのだろうか？ 地元埼玉県民としては、実に寂しく、また情けない気分になった。やはり、埼玉県民の所得水準、文化水準では、ブランデンブルク協奏曲全曲を２日に分けて演奏するというのは、無理があったのだろうか？ ちなみにチケット代は２日で13000円。オペラシティで聴けば全6曲を6500円で聴けるわけだから、いかに管弦楽組曲2曲やヘンデルのオルガン協奏曲があったとしても、地方自治体主催のコンサートであるということを考えるといかにも高すぎる。これが、せめて1日5000円なら許せるが。こんなに聴衆が少ないと、演奏家にたいしても申し訳ないのではないか。県民の一人として埼玉県にも善処を求めたい。
さて、演奏の方であるが、こと器楽に関しては、やはりＢＣＪはすでに世界の超一流の部類に入る団体であることが改めて実証されたといえよう。また、同じ曲を何度も演奏しているわけであるが、そのたびに完成度があがっていくのがよくわかる。
ヘンデルのオルガン協奏曲は、以前に比べて同じ団体とは思えないほどのすばらしい出来。弦は各パート1人ずつという極めて小編成であったが、オーボエが入ることにより、まるで大オーケストラのような華やかな響きになる。ヘンデルはオーボエがかなり好きだったようであるが、楽器の使い方を見ると、それがよくわかる。ホールも曲や編成にピッタリあっていた。
管弦楽組曲第１番。これも過去何度か演奏された曲ではあるが、完成度の高さが感じられる。手馴れたものという感じがする。Ａ＝３９２のフレンチピッチがこの曲のフランス風の響きとマッチしていた。オーボエはもともとフランスのオケの中でアンサンブル楽器として発達したものであるが、この日はポンセール作のフレンチピッチのオーボエを使っていたようだ。これが実に効果的だ。ウケ狙いの作戦（？）も相変わらずズバリと決まっていた。全体的に打合せなしの即興的装飾が随時に聴かれた。
ブランデンブルク協奏曲に関しては、オペラシティもあるので、今日のところは感想を述べずにおきたい。ただ、長年の夢であった、第４番の通奏低音を鈴木秀美のチェロで聴くというのがついに達成され、大満足だったということだけ申し上げておきたい。今まで何度もこの曲を生またはＣＤで聴いたが、どういうわけか、いつもヴィーラント･クイケンがチェロ。昨年のラ・プティット・バンドもそうだった。個人的にはイマイチ満足していなかったので、いつか、鈴木秀美さんのチェロで聴いてみたいと思っていたのだ。
ということで、初日はそれなりに満足して帰ってきた。久しぶりに演奏会後に焼き鳥屋で飲んだ。「笠置そば」なる立ち食いそば屋ではあるが、焼き鳥やたいやき、たこやきもやっており、なかなかいい店だ。味にうるさいＢＣＪメンバーも、そこで密かに盛り上がっているようだ。これもさいたま芸術劇場に行く楽しみの一つだ。
明日は、管弦楽組曲第２番がある。菅きよみ嬢がソロである。どれだけおとなの魅力を出せるか、楽しみである。そして最大の注目は、ドラエもんこと島田俊雄さんが、新作トランペットをもって、どのような交通手段で地元のコンサート会場に現れるかである。私の個人的希望としては、ぜひ、トランペットを背中に担いで、自転車で登場してほしい。そして、このブランデンブルク協奏曲のＣＤジャケットは、もちろん、「自転車に乗る島田俊雄」である。「自転車に乗る」と聞いて「ピーン」と来ない人は、明日会場で鈴木雅明オルガン演奏のＣＤを買うとよい。
とにかく、だまされたと思って、さいたま芸術劇場に来るがよい。
（2000/06/03）
昨日のヘレヴェッヘ「ロ短調ミサ」には、宮様殿下夫妻が来場していた。「宮様殿下」といえば、最近売出し中の若手バロックヴァイオリニストを思い出すが、そうではない。正真正銘の宮様、皇太子ご夫妻である。この皇太子殿下、実は古楽器演奏の経験がある。濱田芳通さんのお父君と親交があり、その関係で古楽業界とも接点があったようだ。神戸愉樹美さんとバロックヴィオラで共演した経験もある。濱田さんのスタジオには、その時の写真が飾られている。ＡＨはこの皇太子そして今上天皇の前で演奏したことがある。ただし、日本武道館で何千人のうちの一人としてであるが。ちなみにその数年前には、若松夏美、高田あずみの「運命の出会い」があったことはあまりにも有名である。
この「ロ短調ミサ」は、言うまでもなくキリスト教の音楽。「バッハの音楽は宗教を超えて普遍的である」とはいっても、やはりキリスト教の音楽である。そこに、日本の「神」である天皇家の人々が来る。今話題の神道政治連盟は、そして、「神の国」発言で国会を解散した某国の内閣総理大臣はどのように考えているのだろうか？ 宮内庁は反対しなかったのか？ もはやこういう時代なのに、いまだに「日本は天皇中心の神の国」などという主義主張で政治を行おうとしているなどというのは実に不思議である。皇太子殿下には、是非、内閣総理大臣に、この演奏の感想をお聞かせいただきたい。
さて、肝心の演奏だが、正直言って世界の超一流の凄さをまざまざと見せつけられたという感じ。感動はもちろんだが、ショックを受けたという方が自分の心に素直なのかもしれない。以前、北とぴあで来日した際に、ＢＣＪとの比較云々が盛んに議論されたが、もう、そういう次元ではない。高い技術や高い音楽性の裏付があるというのはやはり説得力が違う。いかに気持ちが入っていても、それをきちっと表現出来る技術、体力、知力がなければ、なかなか聴衆には伝わらない。
個別的には、やはり、合唱の中でテナーとアルト、この内声部の充実が、全体をより深みのあるものにしていたと思う。この日のアルトは男性２、女性２の編成だったが、全く違和感がなかった。どうしてこういう響きで歌えるのか、不思議である。この団体、それぞれの歌手が声の質まで合わせているような気がする。さらに、バスなどは弦楽器との音色の溶け合いすら意識しているような感じがする。全体的には、ダイナミックレンジが非常に広い。フォルテでもアンサンブルが乱れない。本当にアンサンブルとしてはすばらしい。
ソロは、マタイに関しては不満だったが、この日は満足できた。パドモアもアリアの方がいい。ソプラノとアルトのコンビネーションもなかなか。
オケは、木管楽器がさすが。ポンセール＆タカコンビは言うに及ばず、フルートの２人特にアンタイがよかった。彼も大物の一人。このあたりがいいと、演奏に味わいが出る。
全体的には「大人のアンサンブル」という気がする。合唱団員もかなりのベテランもいる。若手の修行の場と化してしまっている某合唱団とはそのあたりが違う。日本でも海外での修行を終えて、なおかつ合唱団で活躍するような人材があらわれるとよいのであるが。
それとつまらない話であるが、ヘレヴェッヘの指揮法、どうも歌手向けとオケ向きでは違うようだ。その辺を場面によって使い分けていたような気がする。オケのところでは割合と拍をはっきりと示し、歌手のところでは拍よりも流れや歌いまわしを示すような指揮法をとっていた。バッハの時はいつもそうなのか、少しは器楽奏者のことも考えて指揮法を工夫し始めたのか真相はわからないが、以前の器楽奏者には全く訳がわからない指揮ぶりからすると、随分わかりやすかった。
こうやって、ロ短調ミサについて思い返してみると、つくづくヨハネを聴き忘れたことが悔やまれる。もう一生彼らのヨハネを聴くチャンスは訪れないかもしれない。そう思うと、悔やんでも悔やみきれない。しかし、いつまでも悔やんでいても仕方がないので、ロ短調ミサが聴けただけでもよしとして、明日からのＢＣＪブランデンブルクシリーズに向けて気持ちを切り替えよう。明日は、ヘンデルのオルガン曲もある。以前、テレビ中継が入ったときの苦い思い出があるが、今回はどうなることやら。
（2000/06/02）
土曜日の「ヨハネ」忘れの無念さを晴らすべく、ＴＯＣへ乗りこんだ。
異様に速い冒頭合唱、バラバラなアンサンブル。少々不安な立ち上がりでしたが、徐々に調子を出してきたよう。この人たち、とにかく体が違うのか、楽器やのどから出てくる音が全然違うのです。合唱も含めて全員がM.ポンセールみたい。そして、騎馬民族的といおうか、実に骨太の音と演奏です。しかし、その一方で、まるでラヴェルでも聴いているかのような錯覚に陥りそうになる豊かな色彩感。彼らの「強い」芯のある音は、特に不協和音で音がぶつかる時にその威力を発揮します。これがやわらかい音だとあまりよくわかりません。
さて、ソリストですが、全員イマイチだったような気がします。特に、レチタティーヴォがつまらなかったです。エヴァンゲリスト（パドモア）の「ペテロの否認」など、あまりにも普通過ぎてほとんど印象がない。通奏低音の問題もあるでしょうけど。バス（ステファン・マクラウド）は、イエスにしては声が軽すぎるといおうか、力がないので、あまり威厳を感じない。この人、ＢＣＪにも登場しますが、やはりレパートリーを選ばないと、持ち味が出ないような気がします。アルトのダンツですが、やはり、あの個性的なチャンスの後に聴いてしまうと全く物足りない。「憐れみたまえ」はやはり男性アルトの方が全体的にいいような気がします。これはヴァイオリンもダメですね。ソプラノのヨークもイマイチ。一番イマイチでかつ心配だったのが、ペーター･コーイ。当初予定ではイエス役だったのが、ピラトとアリアに変更。いつもＴＯＣでのＢＣＪでは圧倒的な声量と力強さを誇っているのに、この日はどうもおとなしすぎるような感じ。「こんなはずじゃ・・・」という気がしました。どうしちゃったのでしょう？ なお、演奏者紹介に、共演者の名前として当然入っているべき鈴木雅明＆ＢＣＪの名前が入っていない。誰が書いたか知らないけれど、彼にとってはＢＣＪの仕事はとても重要なはずなのだけど。
正直いって、この団体はやっぱり合唱だな。これは確かに凄い。ロ短調ミサの「kyrie」の冒頭のソプラノなんか、きっとしびれてしまうだろう。なんか、骨が鳴っているという感じの声なんですね。楽しみ楽しみ・・・。
今度は「大好き」なサントリーホールだし、仕事場から歩いて行けるなんて最高です。
（2000/06/01）
第178のひとりごと・・・ああ、何たる不覚、連続コンサート忘れ
ああ、なんということ。
２週間に２つもコンサート行き忘れるなんて。
あのフレスコバルディを聴きおわって安心しきってしまったのか、それとも、爆忙で昔ほどコンサートに執着がなくなってしまったのか・・・。
先週日曜日の「ガットカフェ」に続き、今日はヘレベッヘのヨハネを聴きそびれてしまった。チケット買っていたのに。
来週はヨハネとロ短調ミサ、そして週末にはさいたま芸術劇場でＢＣＪのブランデンブルク協奏曲。さらに８日はＴＯＣでのＢＣＪ。これだけは絶対に忘れないようにしなければ。そしてそれが終わったら、月末のサントリーオルガンまでしばらく休もう。
ことしは、バッハイヤーだが、正直いって今の仕事の忙しさでは音楽どころではない。
ヘレベッヘが終わったら、あとはＢＣＪの定期＋ヨハネ＋ロ短調だけにして、あとはチケット買うのやめようと思う。
残念だけど、これも仕方がないこと。演奏家の皆様、音楽事務所の皆様、どうかお許しください。
（2000/05/27）
ＢＣＪのゲストオーボエ奏者として有名なアルフレッド・ベルナルディーニが指揮兼オーボエ奏者として活躍するＣＤが発売になっています。
vivaldiの協奏曲集です（astree E 8679）。
ベルナルディーニはオーボエの協奏曲を２曲吹いており、あとは指揮者として「ZEFIRO」を率いています。この団体は、例によってイタリア古楽団体風です。ただし、サウンドは例の調子でも、表現はさほど過激ではありません。
ベルナルディーニファン及びご興味のある方はどうぞ。
（2000/05/11）
ロビンが日本でメサイアを歌う。とはいっても、ＢＣＪでではありません。ハリー・クリストファーズ指揮ザ・シックスティーンのソリストとしてです。ロビンは言うまでもなくイギリス人。メサイアは母国の曲であり、母国語のために書かれた曲です。バッハもいいですが、やはり彼のヘンデルを生で聴きたい。そういう人は少なくないのではないでしょうか。
彼の透明感あふれる声は、メサイアのような曲にこそふさわしいような気がします。
他のソリストは、リンダ・ラッセル、ジェームズ・ギルクライスト、マイケル・ジョージです。
バッハに明け暮れた耳の気分転換としていかがですか？
すでに販売開始されているようです。ご興味のある方は以下まで。
１２／１３ １８：３０ 横浜みなとみらいホール
１２／１５ １８：３０ 東京オペラシティコンサートホール
お問合せ先 アレグロミュージック ０３−３４０３−５８７１
（2000/05/06）
最近、アメリカのインターネットベンチャーの間で「エヴァンジェリスト」という言葉が流行しているようです。会社での役職を表す肩書きにまで使われているようです。「エヴァンジェリスト」とは、日本語では「使徒」と訳されています。語源はいうまでもなく、イエス・キリストの教えを述べ伝える弟子たちです。最高経営責任者（CEO）とそれに付き従う人々という感じで、その会社の進めようとしていることを世に広める役割ということなのでしょう。それぞれのエヴァンジェリストには役割があって、それぞれその世界でのスペシャリストとのことです。法律、会計、財務、マーケティング、技術などの専門家です。いままでも「責任者」というかたちで存在はしていましたが、それとはどうも違うようです。「使徒」というからには、「述べ伝える」機能がなければならないはずです。
日本にも、最近「エヴァンジェリスト」と呼ばれる人々が登場してきました。そういう人々の一言一言には、何か「福音を述べ伝える」のに共通した感じを受けます。
それはそうと、エヴァンジェリスト、いや、個人的には「エヴァンゲリスト」は、ただの「使徒」ではなくて、もっと厳密に言えば「福音史家」という訳がやはりふさわしいと思います。
そして、その語り口は、ゲルト・テュルクの様に・・・。
通奏低音がついていなければならない。
そんなわけはありません。
それをいうなら、バッハとその音楽を演奏する人々も「福音史家」の名に値します。
具体的に誰を指すのか、そんなことは言うまでもないことです。
しかし、もし、ＡＨが「エヴァンゲリスト」と呼ばれるなら、やはりゲルト・テュルクのように語りたいものです。
久々の「ひとりごと」なのにくだらないことをいって申し訳ありません。
（2000/05/06）
鈴木雅明氏、秀美氏のご尊父、鈴木正美氏が2000.4.22に召天されました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
いかにも品のいい紳士で、しかも、非常に若々しくお元気で、自分も歳をとったらあういう風になりたいなと思わせるような方でした。鈴木兄弟や美登里さんの演奏会には必ずご夫婦で顔を出されていました。あんな立派な息子を2人も持って、さぞかしお幸せだったでしょうし、雅明さん、秀美さんも大変な親孝行だと思います。もうあのお姿にお目にかかることもないかと思うと、とても寂しい気がします。
今から思えば、あの21日のマタイの気迫と集中力は凄まじいものがあった。私は前から5列目で聴いていたのですが、すべてが終わった瞬間の鈴木秀美さんの表情がとても印象的でした。すべてを出し尽くして、しばらくは放心状態といおうか、なんともいえない表情でした。結果的には、今回のマタイは「父に捧げるマタイ」になってしまったわけです。
「ひとりごと」では、しばらくＴＯＰページの色を灰色にさせていただきます。
（2000/04/24）
昨日はついにあのマタイに行ってしまった。
ニューフェイスもいたが、それよりも懐かしい顔があちこちに見られたのがうれしかった。
ヴァイオリンでは、ラ・プティット・バンドでも活躍の戸田薫さん。風貌は昔（芸大の学生時代）と全然変わっていないが、弾きはじめるとやはり風格が違う。他の古楽器始めたばかりの人とは、ボウイング見ただけでもレベルが違いすぎるような気がした。夏美さんと並んでいる姿は「豪華」とすら映った。
コントラバスの西澤さん。ＢＣＪ創立当時のメンバー。読響マタイをにらんでか？
合唱団に目を向けると、ソプラノにあの村谷祥子さんの姿が・・・。
そしてもちろん、マイケル・チャンス。以前と異なり、「枯れた味わい」が感じられるようになっていた。アルフレッド・デラーが晩年に録音したパーセルの味わいに似たものがある。
「懐かしい顔」といえば、超若手ではあるが、菅きよみさんも私にとっては「懐かしい」一人。それくらい若いころから活躍していた。昔からオマセな演奏をしていたが、今回は実に大人の演奏であった。こういうのは好きだ。同じフルートの菊池香苗さんも個人的には懐かしい。
「懐かしい」ということは、だいぶご無沙汰ということでもあるが、その一方で、創立以来、まさに主（ぬし）のごとく君臨しつづける人たちもいる。その方々に敬意を表して、ここに名前を紹介させてもらおう。
若松夏美さん、高田あずみさん、竹嶋祐子さん、森田芳子さん、小野萬里さん、鈴木秀美さん（あたりまえ）、堂阪清高さん、鈴木美登里さん（これもあたりまえ）、柳沢亜紀さん、緋田芳江さん、鈴木環さん（社長）、今井奈緒子さん。この中で91年3月のマタイに出演しているのは、鈴木美登里さん、村谷祥子さん、社長、柳沢亜紀さん、若松夏美さん、高田あずみさん、森田芳子さん、鈴木秀美さん、今井奈緒子さん、西澤誠治さん、そしてマイケル・チャンス。当然ながら、マエストロはこの中に含まれていない。
残念なのは、留学予定の穴澤ゆう子さんが含まれていないこと。会場では見かけたが。
しかし、「昔、昔」といっているが、この団体、まだ10年しか経っていないのだ！
さあ、寄稿文を書かねば・・・。25日が締めきりだ。
（2000/04/22）
第172のひとりごと・・・甘口「ＥＣ採点簿」〜ＢＣＪ公式サイト
かなり古いネタになってしまいましたが、ＢＣＪ公式サイトが４月１日に開設されました。
本来なら、日経ネットビジネスでおなじみの三石玲子さんに「ＥＣ採点簿」をお願いしたかったのですが、あいにく予算がなかったので、かわりに「ネットビジネスで成功するための９つの絶対条件」でおなじみの池田＠ＣＰＡ氏に甘口「EC採点簿」をお願いすることにしました。池田＠ＣＰＡ氏は、古楽の熱狂的なファンでもあるそうで、ＢＣＪの賛助会員でもあります。
| 総合評価 | **** | |
| 品揃え | ** | ＢＣＪグッズの通販がない。 チケット購入や空席状況表示ができればなおいい。 |
| ナビゲーション | ** | 全体的に写真が多く、重い。 |
| 商品表示 | **** | 関係するアーティストのＣＤまで紹介してありよい。 また、ジャケット写真つきでわかりやすい |
| 情報発信・コミュニティ機能 | **** | Club@BCJによる情報発信がよい。 |
公式ＨＰは当初の予想を大きく上回るスケールで登場しました。ＢＣＪに関する情報は、裏情報を除いてすべてここからスピーディーに入手できます。
特筆すべき点は、演奏家からのメッセージ、それに「日記」です。演奏家からのメッセージは、ＢＣＪメンバーからファンへのメッセージを伝えるもので、音楽以外の演奏家の素顔をそこに垣間見ることができるようになるに違いありません。「日記」は「工事中」ですが、一体誰が書くのでしょう？ ＢＣＪ事務局でしょうか？それとも雅明さん？これも毎日は大変でしょう。もし、本当に「日記」になれば、アクセス数が激増することは間違いありません。ただ、無理はしてほしくないですね。「連載」というのは傍から見るよりはるかにキツイです。
今回の目玉は「Club@BCJ」でしょう。これは、WEBだけではなく、メールによるニュース配信をしようというもので（メールマガジン）、今評判のBit Valleyのベンチャー企業であるe-Groupsの無料ML(メーリングリスト）サービスを利用しています。メール配信の他に、WEB上でも見ることが出来ます。こちらのサービスも４月１日から新しくさらに使いやすくなりました。ただし、しばらくは不具合が生じるかもしれません。未登録の方はさっそく登録しましょう。
一つだけ難点をいうとすれば、ＢＣＪ事務局の紹介ページに「社長」の名前がないことです。これは、最近のＩＲ重視の流れの中では、やや物足りなさが残ります。
TOPページが「黒」というのは、一般の企業サイトではあまり使わないそうですが、個人的には好きです（「ひとりごと」が最初黒くしたのは、秀美さんには不評でしたが・・・）
とはいえ、全体的には質量ともに充実したＢＣＪ公式サイト、ＢＣＪファン必見です。
このサイトは「広報担当：平井由己子」さんが作成されているのでしょうか？
一度お会いして、ＢＣＪのE-Businessへの取り組みについて意見交換し、ビジネスモデルをブラッシュアップしたいと思います（が、きっと門前払いでしょうね・・・）。メールマガジンに広告入れてサイト運営費を稼ごう！
以上、甘口「EC採点簿」でした。
（2000/04/09）
ＢＣＪが２年ぶりにカンタータ第２１番の再録音をしました。第１４７番と共に１２巻に収録されています。とはいえ、前回が初版で、今回はライプツィッヒ版。ピッチも前回はコアトーン、今回はカンマートーン。オケの編成もコンチェルト・パラティーノ入り。ということで、ちょっと聴いただけで随分雰囲気が違います。コンサートマスターとソリストは前回とほぼ同じ（除くソプラノ）。オケのメンバーもほぼ同じです。合唱団はアルト以外はあまり変わっていない、のにです。
サウンド面でしいて目立つ違いを挙げれば、オーボエが前回のポンセールの輝ける音色から、普通のオーボエの音になったこと。それと、前回はアルトに天才米良美一が入っていたこと。それと、プロデューサーが前回はBahr社長自ら務めたのが、今回はBraun氏になったことで、やや響きが違うような気はする。最も前回もBraun氏はトーンマイスターをやっていましたが・・・。
一番目立つ違いは、ソプラノが野々下さんになったこと。このことは圧倒的に大きい。個人的には新盤の最大の魅力を強いてあげるとすれば、この野々下さんのソロである。理由はあえていわない。
しかし、これはバッハ自身の仕事がそうであったように、単なる焼き直し、マンネリ仕事では決してない。では何が根本的に変わったのか・・・。
速い曲のテンポが前よりも速くなった。それはその通りだが、それが指揮者の何らかの心境の変化をあらわすのか、それともたまたまか・・・。
結局のところ、私には本質的な違いは良くわかりませんでした。
好みをあえていわせてもらえば、ソプラノは１２巻、合唱とオーボエは６巻が好きです。初期の録音での合唱団の響きが好きだっていう人、結構いると思いますよ。
この「ひとりごと」って、一体何なのでしょう？ （言語明瞭意味不明瞭）
（2000/04/02）